2020年4月26日日曜日

発達障害の感覚過敏の特徴、発達障害の感覚過敏だけが偏食の理由ではない、発達障害では感覚過敏だけでなく感覚鈍麻もある、発達障害の“ひきこもり”は“ひきはがし”で解決できるのか、頭がよい子どもの発達障害は軽いのか

発達障害の感覚過敏の特徴その2、発達障害の感覚過敏だけが偏食の理由ではない、発達障害では感覚過敏だけでなく感覚鈍麻もある、発達障害の“ひきこもり”は“ひきはがし”で解決できるのか、頭がよい子どもの発達障害は軽いのかについて

#1
 発達障害の感覚過敏の特徴その2

#2 発達障害の感覚過敏だけが偏食の理由ではない

#3 発達障害では感覚過敏だけでなく感覚鈍麻もある

#4 発達障害の“ひきこもり”は“ひきはがし”で解決できるのか

#5
 頭がよい子どもの発達障害は軽いのか

発達障害を理解するためのコンテンツ 

発達障害者支援法


#1

発達障害の感覚過敏の特徴その2

発達障害の自閉症スペクトラム障害で起こりやすい感覚過敏については前に味覚と触覚について紹介しましたが、それに続いて今回は視覚、聴覚、嗅覚の特徴について紹介していきます。

視覚過敏では、光や白いものをとてもまぶしがる、フラッシュを嫌がる、特定の色のものがとても苦手(黄色が苦手、緑色で落ち着く)、色の組み合わせでとても苦手なものがある、反射や回っているものをずっと注視している、人ごみなど動くものがたくさん目に入るとすごく疲れる、テレビ・パソコン・スマホの画面から目を反らす、といった特徴があります。

極端な偏食につながる視覚過敏としては、白い食品しか食べられない、白い食べ物や飲み物が嫌い、食器の形や色が違うと食欲が湧かない、といったことが起こりやすくなっています。

聴覚過敏では、音が大きく聞こえる、大きな音が苦痛、拍手の音が苦痛、特定の音や声が苦手(スピーカーやマイク、金属音、サイレン、雷、花火、赤ちゃんの泣き声、怒鳴り声など)、赤ちゃんや子どもの泣き声が脳をつんざくように響く、BGMがうるさく感じる、騒々しい場所では集中できない、喫茶店や人ごみのざわざわする音と目の前の人の声が同じ大きさで聞こえる、話の聞き取りが難しい(必要な声を選んで聞くことができない)、周囲の音が同じように聞こえる(選択的に音を聞くことができない)、繁華街や駅で騒音すべてを等しく拾ってしまい疲れる、時計の音・換気扇・空調・冷蔵庫などの生活音が気になる、掃除機やドライヤーなどの家電の音が耳に突き刺さるように感じる、蛍光灯のノイズ音がとても気になって耐えられない、といった特徴があります。

極端な偏食につながる視覚過敏としては、特定の食べ物の音を嫌がる(バリバリ、ガリガリ、パリパリ、サクサク、シャキシャキなど)、野菜を噛むときの音が不快、コロッケを噛むときの音が嫌い、ナイフやフォークが食器に当たる音が不快、といったことが起こりやすくなっています。

嗅覚過敏では、特定のにおいがものすごく苦手(石鹸、柔軟剤、花、線香、香水、食品、バス、体育館、体育用具室、保健室、絵の具、接着剤などの乗り物のにおい)、給食のにおいが苦手、化粧品売り場・食品売り場・動物園など苦手なにおいの場所にいられない、他の人が気づかないようなにおいにも気がつく、なんでもにおいを嗅いで確かめる、唾液や汗など自分のにおいを嗅ぐ、トイレの前を通れない、といった特徴があります。

極端な偏食につながる嗅覚過敏としては、焦げた臭い・匂いに非常に敏感、香辛料の匂いが不快、といったことが起こりやすくなっています。

#2

発達障害の感覚過敏だけが偏食の理由ではない

発達障害の自閉症スペクトラム障害で起こりやすい極端な偏食につながる五感の感覚過敏について2回にわたって紹介してきましたが、味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚とは関係がないところでもの極端な偏食を起こしている例があります。

牛乳にまつわることが多く、業界でも牛乳を多く扱う食事の世界でも、牛乳を飲めない子どもへの対応に苦慮しています。

というのは、牛乳は子どもの成長に欠かせないものとされていて、学校給食では当たり前に出されているからです。

栄養面だけでなく、他の子どもが普通に飲んでいるのに、その子どもだけが飲めないということだけでも仲間に入れてもらえないようなことにもなります。

味覚過敏で牛乳が飲めないという理由の一つに、濃厚さがあります。

これを特有のとろみと感じている子どももいて、舌触り、喉ごしに不快感を感じています。

この対策として炭酸で割るという方法もあるのですが、これも苦手だということも少なくありません、味が嫌だというなら、チョコレート味やイチゴ味にしたり、料理に使って牛乳を感じなくする方法もあるのですが、牛乳に過敏になっていると、それが少しでも感じたら飲めない、食べられないということもあります。

以前に紙パックの牛乳でストローを刺したところ、飲む前にストローから牛乳が出てきて、気持ち悪かったということで手の感触のほうで飲めない、その記憶があるから飲めないということも起こります。

幼いころに牛が大きくて恐怖を感じた、牛の臭いが気になって嫌いになってから牛乳が飲めなくなったという子どももいます。

他の子どもが牛乳を吐いたことがあり、それから飲めなくなったという例や、それを目撃したわけではなくて話に聞いただけで怖くて飲めないということもあります。

それなのに牛乳は健康によいということで、無理に飲ませようとしたことから、親のことが嫌いになって、それから飲めなくなったということまであります。

以前に感覚過敏で牛乳が飲めない子どもにとっては「牛乳はバリウムを飲まされているようなもの」ということを紹介しましたが、バリウムを強要されたら、それは飲ませようとする人のことを嫌いになるのは当然のことです。

それを知らないうちに料理に入れられたことで、もっと嫌いになってしまったという例もあります。

このほかに、冷めたご飯が食べられない、餅は喉に詰まると思って食べられない、ということもあります。

家では飲食できたものでも、銘柄が違うと食べられないという子どどもいます。

家で使っている食器でないと食べられないという例や、不衛生な台所で作ったものは食べられないということもあります。

以前は学校給食は食べられたのに、給食室(厨房)を見学したあとから給食が食べられなくなったという子どももいます。

作っている人がわかっているものは拒否反応が起こるということから、加工食品しか食べられないということまであって、発達障害の極端な偏食の対応は大変な手間と労力が必要になってくるのです。

#3

発達障害では感覚過敏だけでなく感覚鈍麻もある

発達障害の自閉症スペクトラム障害には感覚過敏が多くみられて、これが極端な偏食につながり、脳と身体の発育に影響を与えていることについては、各方面から伝えられていることです。

それだけ深刻で、多くの専門家が対応に当たっている証拠でもあります。このコーナーでも何度か取り上げてきました。

その感覚過敏とは逆に、感覚が鈍いために身体的トラブルを起こしかねないと指摘されているのが感覚鈍麻です。

五感の鈍麻で、味覚鈍麻の場合には味の感覚が鈍感で、微妙な味わいの区別ができないだけでなく、辛いものや酸っぱいものなど刺激的な味も平気で食べられるという特徴があります。

そのために、何にでも塩や醤油などをかけて食べるということもします。

味覚と嗅覚は連動していることが知られていますが、嗅覚鈍麻はにおい(匂い、臭い)にも鈍感で、においの区別ができないということも起こります。

においを嗅いで安全に食べられるのかを確認するということは今では少なくなったようで、そのために疑いなく口に運んで、それが食中毒を一気に広めることになるということもあります。

触覚鈍麻は、温度の変化に鈍感で暑さや寒さが平気、冬でも薄着など温度に鈍感で季節に合わない服を着ている、砂利道を素足で走り回る、ケガをしても痛みに鈍感、刺激を求めて血が出るまで腕を掻く、熱いものも平気で飲めるという危険につながることもやってしまうことにもなります。

視覚鈍麻は、まぶしいものも平気で、カメラのフラッシュの刺激にひかれる、光や太陽などのまぶしいものを止めるまで見続けるということもしてしまいます。

聴覚鈍麻は、声のボリューム調整ができないので常に大声で話す、危険を知らせる音に反応しにくいということがあります。

自動車のクラクションに気づかないで道に飛び出すということもあるので、これも注意してあげなければならないことです。

感覚過敏の子どもは、五感のすべてが過敏ということではなくて、一部が感覚鈍麻ということもあって、判別して周囲が対応してあげるためには、感覚過敏と感覚鈍麻の両方の理解が必要になってくるのです。

#4

発達障害の“ひきこもり”は“ひきはがし”で解決できるのか

ひきこもりと発達障害は別のものと思われていた時代もあるのですが、「中高年のひきこもりの30%が発達障害」ということが内閣府から発表されてからというもの、ひきこもりは発達障害が原因と考えられるようになってきました。

ひきこもりの問題は、なんといっても、ひきこもっている状態です。

これを治った、改善したという状態にするためには、ひきこもりを終わらせること、つまり閉じこもっている部屋から出ること、家から外に出るようにすることです。

そのことが実現できたからといっても、ひきこもり問題が解決できたわけではないのに、ひきこもりを解決することを商売にする人まで登場しています。

こういう人たちは「ひきはがし隊」とも呼ばれています。

この“隊”は「〜したい」という意味を含んでいて、ひきこもりを剥がすように外に出すことを成功させれば、それで仕事は終わり、それで完結ということを実施する人は望んでいるはずです。

それは実施する人の理屈であって、ひきはがしをされる人、つまり、ひきこもりをするしかない人にとっては、とてもではないけれど望んでいることではありません。

ひきこもりは“怠け者”“好きなことをしているだけ”“現実逃避”というようなことを言われます。

もちろん誤った認識なのですが、何も苦労をしたくないから、楽なことを求めているから、ということではありません。

自分だけの室内にこもってゲームしかしていない人は、それ以外に助かる道がないからです。

現実から逃避しているのではなくて、ゲームをして、そのときだけでないとしても、心の安定が得られないために、それ以外の選択肢がなくて、ひきこもっているしか他に方法がないという状態なのです。

そのことが理解できないと、無理にでも“ひきはがし”をして、そのためにひきこもっている人が、どんなことを思っていても関係ない、ひきはがしのために状態が悪くなっても関係ない、というようなことを平気でやってしまうということです。

#5

頭がよい子どもの発達障害は軽いのか

子どもの犯罪を恐れるあまりに殺害まで走ってしまった親が高級官僚だったという報道を受けて、その子どもが軽い発達障害であるということがネット情報で流されていました。

その根拠としてあげられていたのは、「レベルの高い大学に合格していたから」ということでした。

学力が高くて、偏差値が高い大学に合格するだけの能力の持ち主であったら、発達障害ではない、もしも発達障害であったとしても低いレベルしかないという考えからきている発言です。

発達障害児は、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害ともに、学力の面では低いような印象が抱かれがちです。

自閉症スペクトラム障害は社会的なコミュニケーションが苦手で、それが学習面ではマイナスに出てしまいがちです。

注意欠如・多動性障害は過剰と思われるような行動から、どうしても落ち着いて学びにくくなります。

学習障害は、学ぶことそのものに障害が起こっているので、こちらも学力に影響が出てしまいがちです。

こういったことでは、学力面で低くなりがちであるというのは認めることではあるものの、だからといって発達障害では学力が低くて、学力が高ければ発達障害ではないという、あまりに単純なことは言えないはずです。

発達障害の状態は、脳の発達の遅れが関係して、そのズレがあるために、普通と思われるようなことに対して、特徴的な行動を示すもので、同じ学力であっても、同じような行動を起こすとは限りません。

限らないというよりも、むしろ学力とは関係なしに、重い状態になることもあれば、逆に軽い状態になることも当たり前に起こることもあります。

それなのに、頭がよい子どもの発達障害は軽い、そうでない子どもの発達障害は重いというような印象が抱かれてしまうのは、まだ発達障害の実態が充分に理解されていないからです。

むしろ、自閉症スペクトラム障害では成績がよくて、いわゆる頭がよい子であることから発達障害であることが見逃されてしまい、それは発見を遅らせることにもなります。

そして、支援が遅れることから、本来の能力が発揮されないという不幸なことにもなりかねません。そのことを知って、発達障害児に向かい合ってほしいのです。

特定非営利活動法人日本メディカルダイエット支援機構

理事長 小林正人様

より掲載依頼をいただきましたので、掲載しております。

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